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自治組合の現在

 地域のお祭りの準備でお囃子の音が聞こえてくると、いよいよ祭りの時期がきたんだなと、血が騒ぐ方もいるようです。お祭り準備がはじまるとその地域の住人たちは毎晩のように集まり、準備をはじめる。そして準備の後は宴。それは食事をしたり、歯を磨いたり、お風呂に入ったりするのと同じで、幼いころから生活に組み込まれているもの。田舎では土地に根付いている慣習や文化、人付き合いが今も色濃く残っています。

 都会の暮らしにあるような希薄な人間関係に慣れて、煩わしい人間関係やしきたりもなく、自分の時間を自分や家族のためだけに使える生活をしていると、田舎の密な人間関係にうんざりすることもあるのではないか、実は区や自治組合のあり方に疑問を抱いている人が多いのではないかという心配もありますが、「(この窓口に相談に来る方は)そこまで最初から思っているという人はいない印象で、むしろ田舎へ来たのだからそれも楽しみたいという前向きさがあります。」と商工観光課 移住・交流促進室 室長の吉澤さんは語ります。

 

 「お祭り、神社の管理、ゴミ集積場の共有、河川一斉掃除、防犯防災訓練、雪の日の雪かき…。これまでそれらの多くが自治会と呼ばれる地域の中の小さなコミュニティで約束事のように行われていて、でも、コロナ禍においてはこれまでの自治会の活動に制約が設けられ、そもそも従来の自治会の活動の中で本当に必要なことはなんだったのかを、見つめ直すきっかけになっている」と吉澤さんは続けます。時代の価値観や考え方も変わりゆく中で、従来の慣習であった「婦人会」なども解散してゆく地域もあります。

 

 駒ヶ根市には全部で16の区があり、それぞれの下に自治組合があり、さらに細分化された隣組があります。自治組合に加入することで、地域行事やお祭り、神社の運営、ゴミの集積場を共有、河川清掃への参加、防犯防災の助け合いを可能にしてきた側面があります。

 とは言っても、会社都合の転勤でたまたま縁もゆかりもないこの地域へ移り住んだり、移住してきてまだ地域のことに詳しくない人たちからすると、有無を言わさず請求される区と自治組合、それぞれの加入金や区費は、予想だにしない大きな出費となり驚かれることがあります。

 

 【駒ヶ根市の区と自治組合に入るときにかかるもの(金額は地域によって違いがあります)】

 ・区への加入金:〜50,000円

 ・自治組合への加入金:〜100,000円

 ・区費(年間):3,000円〜12,000円

 ・自治組合費(年間):500円〜24,000円

 ・その他 見舞金、運動会会費、夏祭り負担金、街灯負担金、消防費 etc...

 

 地域によって区費の金額がそれぞれ違うのも、外からやってきた人からすると困惑する原因のひとつ。区費の内訳や使用用途がきちんと説明されないままに、金額の比較だけで話が進むと、誤解が生まれやすくなってしまうのかもしれません。

 

 「自治会自体はその活動の中身に関しては、地域ごとの事情があり、伝統的な慣習や文化的な土壌と深く結びついているものがあって、たとえば区費の一覧をA4の紙一枚にまとめて配れば済むっていう話でもなく、なるべくその辺りをそれぞれの自治会の事情に合わせて、個別にお伝えするかたちで窓口では対応させてもらっています。」(吉澤さん)

 

 「そういえば、この間、こんなことがあって…」と、吉澤さんがあるエピソードを話してくれました。それはある地区で開催された移住者意見交換会のこと。移住者の方から今の地域をどう思っているのか、今後どうしたいか、どういう地域にしてゆきたいか、移住者目線の人からの意見を聞こうという試みでした。

 「私のイメージでは、移住者の方から、ああして欲しい、こうして欲しいという意見ばっかりが出るかと思っていたんですけど、移住された十二、三人がいたんですけど、皆さん、非常に満足していると。実は過去に自治会のあり方に疑問を呈していた方もいたんですけど、この前の意見交換会の中では逆に地元側に立ってお話をしてくださっていたので、うまくいっているんだなって思いました。時間をかけて地道な交流があったんだと思います。ふだんの生活の中で、いろんなかたちで交流を深め、互いのことや地元の理解が進んでゆく。こういうのが一番いいかたちなんだなって思いました。

 

 コロナ禍において、その存在意義と価値が改めて見直されつつある自治会。今後も継続的にその活動の様子をさまざまな方々からお話を伺い、自治組合のあり方や役割について発信してゆけたらと考えています。

 変わらないものがあり、変化を受け入れてゆくものもあり、「移住者」「地元住民」といった括りもいつかは溶け合い、人々の対話はこれからも続いてゆく。

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