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INTERVIEW.11

小林和太郎さん Watarou Kobayashi

​#シェアオフィス #まちづくり

 駒ヶ根市の商店街から文化センターへと続くすずらん通り。近年はヴィンテージの古着屋がオープンしたことで県外からの来客が増え、マフィン店や子ども食堂には子連れのママさん、パパさんたちの行き交う姿もあり、これまでにない人の流れが生まれつつある。そんなすずらん通りの中ほどにあるのが926 BLD。もともとは小林福村設計事務所が入っていた建物を昨年からシェアオフィスとしてオープンするために準備を進めてきた。今回はそのシェアオフィスのオーナーであり、小林福村設計事務所の小林和太郎さんにお話を伺った。

 

― これからシェアオフィスとして926 BLDが生まれ変わると思うのですが、地方でなにかをはじめることの良い点、難しい点はどんなことがあるでしょうか?

 「まずはやってみることが大事だと思う。たとえば、都会でなにかやっても、まわりもそれぞれになにかやっているので、やったことが多くのことに埋もれてしまう。それが駒ヶ根のような小さなスケールでなにかをやると目につくし、波及効果はわかりやすい。『それいいじゃん!』って言ってくれる人が一人二人現れると、その口コミ効果が大きいので、人に見てもらえる機会が都会よりもあるんじゃないかという印象はありますね。」

― 手応えがわかりやすいので、そこからの軌道修正や次のステップの準備もできそうですよね。

 「そう、だからまずは小さくても、はじめてみることで得られる実感をもとにトライ&エラーを繰り返しながら、ブラッシュアップしてゆくことがいいんじゃないかと。」

― なにかをはじめてみたい人がいる一方で、それを受け入れるまわりの人たちの様子はいかがでしょう?

 「うちの事務所が完成したときも、素敵ですね、おしゃれですねという外観への反応はありました。設計事務所なんだけど『カフェみたい』とか。そういうセンスには反応してくれるけれど、そこから真似して発展してゆく話があまりないですね。商店街に店を構えているひとたちの中でも高齢の方は自分の代で店を閉めればいいと思っているひとが多いせいか、それ以上の未来の話をする人が少ない。ものごとを考えるときの時間のスパンがあまり先のことまで考えているような感じがない気がする。」

― 子どもの代、孫の代まで話が及ばない?

 「自分の子どもとか、駒ヶ根出身で地元に戻ってくる人たちがいないってことが大きいのかもしれないですね。以前、駒ヶ根の著名人の多くが駒ヶ根に戻ってきていないという話をしたことがあって、そのときにそれってなんでですかね?って地元の人に聞いたら、長男は家に残る、だけど次男以降は家に帰ってくるところがないという昔ながらの社会通念が根強くあるからではないかって。故郷に錦を飾るって言葉はあるけど、その感覚とはちょっと違って、戻ってきても居る場所がないと言われている。そういうことが今の時代でも似たような価値観として残ってるのかもしれないなぁと思ってて。で、さらに今は若い人たちが戻ってきてもその人が力を発揮できる場所がない、仕事がないってところが切実かもしれない。でも、自分の持ってるスキルで駒ヶ根で何が出来るか、何を始められるかって、考える方がいいと思うし、楽しいと思う。」

― 一方で昨今のコロナ禍もあり、リモートワークや二拠点生活ということばも目にする機会が多くなり、場所を選ばず仕事ができる考えが増えてきている。

 「20代は都会で仕事をしているけれど、同じ仕事をしながら30代になったら地方へ行くとか、子どもが生まれて育てるんだったら自然が豊かなところへ行きたいとか、コミュニティが小さいところがいいとか、そういう判断をする人たちが明らかに増えてきている」

― だからUターンで駒ヶ根に戻って来る人もいれば、違う地域からわざわざ駒ヶ根を選んで移住してくる人も増えてくる可能性はある。そういう意味でシェアオフィスは、今までの駒ヶ根にはなかった景色だけれど、未来の駒ヶ根にはあるかもしれない景色のひとつですね。そこでシェアオフィスを選ばれたのでしょうか?

 「私事としては、これまで仕事の90%くらいは東京のクライアントだったけれど、これまでのクライアントも高齢化で事業が先細りしてゆくことが見えている。そこでどうやったらこれからの自分たちの仕事をつくり出してゆくかを考えてたとき、これまで眠っていた事務所の2階のスペースや、今あるスペースを最大限活かさないともったいないよねって。そのとき駒ヶ根にはなかったんだけどシェアオフィスはどうかと思ったんですね。この地域のことを自分事として考えはじめたときに生まれたアイディアです」

 

― 自分自身もこの地域の1人のプレイヤーとして、これまでの建築士というキャリアと、この地域に貢献できることとを組み合わせたときに生まれたアイディアだったんですね。

 「一番のきっかけは、たまたま知り合いで仕事場を探しているひとがいて、ネット環境があれば仕事ができると。かといってどこかに事務所を借りて月々の家賃を払うほどではない。結果として、その方には1カ月くらい試しにこのスペースを使ってもらったんだけど、その経験から意外とシェアスペースというかシェアオフィスのニーズはあるのかもしれないと思いましたね。そこからどういうシェアスペースがあればいいかということを手探りで進めていて、何人かの人にモニターになってもらって使用の感想をもらったり、自分たちの仕事との兼ね合いも考えながら、できることとできないことを試行錯誤しながら1年近くしてきたんです。」

 

― このあたりでシェアオフィスはありますか?

 「このあたりだとドロップインタイプや伊那市が運営しているシェアスペース、シェアオフィスはあるけれど、いろんな人の話を聞くうちに、そこがあまり使われていないとか、利用価格が安い割に稼働していないとか、使いたいんだけど使い勝手が悪いといった感想は届いていて、じゃあ、使われない理由はどんなところにあるのだろうとか、どういうスペースであればこの場所を活用できるのかを考えています。」

 

― 何か具体的なイメージはありますか?

 「例えば、アパートなり、借家は非常にはっきりとした占有使用という中で契約条件が整理されたりしているんだけど、でもその占有スペースも他のひととシェアしてもいいという契約も本来ならあり得る。そうすると、この月のこの日とこの日は使いたいとか、時間帯的にも午前中のこの時間だけ使いたいとか、そういう細かな具体的なニーズに応えてゆけば成り立つのではないかと。今までの貸し手と借り手と1対1の契約関係というイメージを取り払って、もう少し融通の利くかたちで、それぞれが求めている場所と時間を提供することができれば活用されてゆくんではないかということを実感してます。」

 

― 期間限定だったり、週末だけ出店したいというニーズはありそうですよね。

 「このあたりの商店街でも、うちは貸さなくてもいいんだよって言って、シャッターを下ろしていたり、店を閉じている物件がたくさんあると思うんだけど、それをすごく限定的だけど使わせてくれたら、ぜひ使いたいという人は実はいるんじゃないかなと思います。毎月家賃を払うのは難しくても、少しの金額ならお試しではじめてみたいひとはいるんじゃないかな。1つのスペースを複数人でシェアして使用することもできる。で、そういう人たちの起業精神というか、なにかをはじめたいっていうことに応えている仕組みが、今は意外とないのかもしれない。」

 

― 従来とは違った空間の活用方法だと既存の助成金の制度からも対象外になりそうですよね。

 「駒ヶ根市でも今まで閉めていた物件でお店をするときに改修費用はいくらか助成しますとか、家賃補助とかも出たりしますよね。でも、それも1階だけが対象で2階がダメとか、店はいいけど事務所はダメとか。なぜって聞いてもそれはそういう決まりだからというだけで、街がどうなってゆくといいかというビジョンと連動していない。そのあたりは貸す側や制度側の柔軟で多様な解釈が必要なんだと思う。」

 

 小林さんのもとには、例えば農家の人が春夏は仕事があるけれど、冬の農閑期に副業を持っていて、そういう人たちが仕事場として使用できる場所があるといいとか、子どもの受験シーズンだけ勉強部屋として借りたいとか、細かなニーズが集まってきているようです。シェアオフィスと一言にいってもそのニーズを拾ってゆくとこの地域ならではのユニークなサービスを提供できるものになってゆきそうです。

 「少し楽観的かもしれないけれど…」という前置きをしたうえで「日本人のもったいないとゆずりあいの精神があればうまくまわるのではないかという期待がある」と語る小林さんの表情は明るく、楽しそうだ。

 小林さんのシェアオフィスのオープン予定は3月中旬頃。

 内見やご相談は926 BLDのHPから。Home | 926bldg (jimdosite.com)

小林和太郎(和教) Watarou Kobayashi

横浜市出身。社会人を経験後、東京藝術大学大学院修了。一級建築士。(株)小林福村設計事務所 代表。
2015年東京より家族でIターン移住。駒ヶ根のまちなかに築40年余の木造空き家を事務所としてリノベ。人のつながりと活動が生まれる場にしたいと、2024年3月より「926BLDG/シェアオフィス&シェアスペース」としてオープン。「向こう三軒両隣」を建築設計の信条としている。

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